墨彩画家 向原常美さん(奥多摩町在住)

◆タマケン応援サポーター 向原常美さん

 私のアトリエは、東京の屋根、標高700メートルの奥多摩の山中にございます。緑の木々と水の郷・奥多摩の鳩ノ巣渓谷の近くに16年前、小さな庵「五風十雨庵」が建ちました。建設中は、すぐ前の畑の真ん中に2本のヤブ椿が植わっていて、その椿の木に会えるのが楽しみとなり、おやつ運びを喜んで致しました。 

春爛漫、完成間近になりましたある日、「そんなに気に入ったんじゃあ、やるべえ」と、1本の椿を大工さんたちが移植してくださったのです。私の出身地、宮崎市木の椿でした。 

 その日から、ささやかですが私には至福の日々が始まりました。その植えられた椿の向こうは杉木立で小さな川が走り、多摩川に合流するのですが、ちょうど河川敷の辺りは岩がゴロゴロし、湧水が豊富で春はクレソンが群生します。奥多摩の山脈に陽が沈み、やがて夜が沁みるように落ちてくると、私の仕事は進みます。そして夜明け近くに筆を置き、白い靄の中で艶やかに黒々と照り輝く椿の木と語り合うのです。 

●タマケン応援メッセージ

古家の2階の仕事場、しんとした夜更けの静けさの中で、トタン屋根を歩くリスの足音さえ、ドスンドスンと大男の足音のように響いたり、ヒュッと声を立て四角の立派な雄鹿の群れが雨戸を角で叩いたり、山コウモリは飛び交い、カメ虫はブンブン。何分にもそのような山中での暮らしですが、こんな自然は多摩の宝物と思っております。 

奥多摩の森の中から、タマケン応援しています。

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プロフィール

1943年、宮崎県生まれ。86年、第30回公募展日本表現派展初入選以来、同展新人賞、奨励賞2、大賞受賞。現在、同展同人委員。2000年、鎌倉市「御寺京都泉涌寺派覚園寺」客殿に襖絵奉納。03年日本橋三越本店にて企画展、宮崎山形屋創業70年記念企画展他、個展37回開催。20054月~093月まで、宮崎日日新聞連載の高山文彦作「人間の神話」の挿絵担当。093月サライ旅増刊で神話の里・高千穂の魅力を伝えている。東京と宮崎で墨塾「玄の会」を主宰。